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小説 セレスホテルの闇
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Contents
SNS上で起きた騒動
・僕と彼は、この騒動を初めから観察し続けていた。ネット上ではこれを”羽生の宿騒動” とか言うらしいが、とあるフィギュアスケートの引退選手が八戸で12月にアイスショーを開くということであったが、その際に八戸の某ホテル……ここではセレスホテルと名前を付けようか?そのセレスホテルが客室の値段を9万円と付け大騒ぎになったのである。
・彼にとってこの出来事は、復讐を果たしたという快感を伴う出来事。それで僕に歓喜のメールを送ってきた。僕は彼に『一旦落ち着け』と取りなしたものの、やはり僕にとっても社会正義なるものの達成を見たような気もするし、冷静だったはずの思考の中には若干の快感はあったかもしれない。それは否定しないのだが、一方でその刃が向けた先にあるものは……己の破滅なのかもしれない。
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・普段であれば、こんなに高値を付けても騒ぎにはならないと思うし注目すらされない。それを言えば青森ねぶた祭のホテル料金の方が遥かに高く売られている。じゃあなんで世間を巻き込むほどの騒動に発展したのか。ご存知の方もおられるであろうが、これは安値で売られていた当時の予約をキャンセルして、改めて高値で売りなおしたからだというもの。でもこの説はセレスホテル公式で否定された。結果としてキャンセルが発生したのは他のホテルだったのだという。
・しかしながら高い値段を付けていたこと自体は事実だった。いくらダイナミックプライシングとはいっても、あの値段を付けてしまうと……多くの方々が驚いてしまうのは当然。その中核をなすのが熱心なフィギュアファンとなれば相当な勢いになるのは尚のこと。でも誰もがこの時点では、こんな騒動になるとは想像していなかった訳だ。これもまた “某” と名前をぼかすが、一番の要因は……とあるSNSの某巨大インフルエンサーがキャンセルの件と値段設定の件を混ぜてツイートしたことによって、セレスホテルのサーバーダウンまで引き起こすに至ったからだった。
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・もしかするとホテル側はこの件で訴訟に踏み切るかもしれない。でもここで疑問に思ってほしいことが一つ。なぜセレスホテルは、某巨大インフルエンサーがツイートする瞬間まで9万円以上もの価格帯を維持し続けていたのか?もちろんその値段で売ってしまいたいからに他ならないのだが、この一連の騒動を最初から眺めていても知る由のない根本的な原因は他にあった。
・ほう、本社の指示だから?あったかもしれないが、一気に予約の入っていく様子を見て料金をすぐさま変えるような対応は……それぞれのホテルにしか出来ないはず。それとも最近よく聞くAIってやつなのか??これに関して確かめる術を持たないが、もちろんあくまで人によって作られたものなのだから人為的に設定を変えることは可能だろう。
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・根本的な原因。なぜ多くのヘイトを集めてまで、その価格帯を維持し続けたのか?もちろんSNSの状況をホテル側も知っていたのにも関わらず。
・その答えを知るためには、過去に戻り2019年。しかも八戸ではなく青森にまで遡らなければならない。そしてそれは僕と彼がこれまで努めてきたことだ。
発端 それは2019年
・催事があれば非常に高い値段で売る行為というのは……彼が覚えている限りでは、2019年の青森に遡らなければなりません。当時彼はその某ホテルことセレスホテルの従業員であった。
・ところでなぜ青森の話をするのかと疑問に思われるかもしれない。”羽生の宿騒動” はあくまで八戸で起きたことなのだから。実のところセレスホテルでは青森市内の1店舗と八戸市内の2店舗が同じ管轄であり、ブロック長を仮に大矢さんと名付けておこう。その大矢さんは本社より『どうにかしてもう少し “ねぶたプラン” を高く売ることは出来ないだろうか』と指示を受けたのだという。
・セレスホテルのねぶたプラン価格設定は例年2万円台から7万円台ほどで、シングルからトリプルルームになるに従って順々に値段が上がっていくイメージ。この価格を高いと思われるかもしれないが、青森市内にある他のホテルも実際そのようなもの。
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・そこで例年の価格帯に1万円ほど上乗せするために、土産物を付けることにしました。でも彼は思ったのだという。『土産物ならお客さんが勝手に好きなのを買って行くから、わざわざプラン自体に付ける必要はあるのか……?』
・お客様にはそれぞれ好みというものがあるし、プランに付けるというよりは自由に選ばせてお買い上げいただいた方がよいだろうと考えたのだ。そこでセレスホテルには土産を売るような売店はなかったので、ねぶた期間だけでも売店を呼んだらどうかと。現に交差点向かいのホテルでは売店が常設されている。
・でもこれに大矢さん含めほぼ全ての従業員が難色を示したらしい。『売るとしたら自分たちの仕事になるわけだから嫌だ』と。つまりプランに予めついてる土産物にしてしまえば、あくまで渡すだけだから、そこに会計を間違えるリスクは発生しない訳だが……ある意味で普段から会計のお金が合わない現場ならではの悩みかもしれない。
・彼はならばと土産物にホテルでしか手に入らないプレミアを付けるべきだと考え、某キャラクター屋さんと提携してグッズ販売をしている青森市内のお店と接触して、珍しい土産物を選ぶのが良いのではないかと提案したそうだ。でもこれも拒否されるに至った。これは大矢さんとしては、こうもねぶたの定番から脱線しすぎるのはいけないのではないか。それにそのキャラクターが嫌な人もいるかもしれないと。
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・まあ……ここまでの話ならば、他の青森市内のホテルでも話されていそうな内容かと思う。でもここからが違ったのだ。
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『よし楽天じゃらんは1万上乗せで3万台から売るけど、agodaで7万円からのスタートにするぞ!』
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・はっ?
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『agodaはまだ日本に浸透する前だし、主に海外の人が見てるんだ。だから奴らに高い値段で売りつける。もし非難されても言葉はろくに通じないし、元々リピーターになる可能性だってないさ。』
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・えっ?
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・『ついこの間 宴会場の天井から水漏れして、朝食を食べてるお客様方にまじまじと見られたじゃないですか。各部屋のお風呂の排水だって、そのまま栓を抜いたら汚いのが溢れちゃうから、ナットの大きなやつを買ってきて排水溝の入り口に入れてスピードを遅くするような部屋を売ってるんですよ。そうしてもまだなお汚水は溢れるんですよ?そんな部屋を7万から売るんですか??』
『しかも原価1000円にも満たない土産を付けたところで、ガイドや観覧席が一緒についてくるわけでもない。朝食はいつもより豪華かもしれませんが、それ以上のことは何もないのに……。』
・逆に考えれば、そこでしっかりと稼ぎ出すことによって客室の修復費用を捻出も出来る。セレスホテル自体が全国各地に存在する中古ホテルをリノベーションするという事業を行っている。だからこそ高く売る必要があるのだと語るが、日に日に故障頻度が高くなるホテル自体にリミットが近づいているような気もして、そうなれば商売としての限界も感じられる。
・それにあくまで客が “ねぶた” という祭りに心惹かれて泊まりに来るのだから、高い値段が嫌なら予約しなければ良いだけの話……。
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・結果として彼だけ反対だったらしい。それは単純に高い値段で売れればセレスホテルの売上が上がって、社員の報奨金が増えるから。普段は13万円が手取りのところ、そこに3万増えるから大喜びという状況……。じゃあ逆になぜ彼だけ反対できたかというと、それは倫理観や良心云々ということもあっただろうが、実は裏でトレーダーとして稼いでいたからなのであった。通貨や先物まで幅広く手掛けているらしいが、一方で観光業界に魅力を感じてホテルに勤めたのだという。
・ある意味でホテル以外で彼の生活の糧があったことがその判断に影響していたのだが、それをまったく知らない他社員はさぞかし理解できなかったであろう。
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・結局その年のセレスホテル青森、ねぶたプランでしっかりと稼ぐことは出来たのだろうか?
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・……実は出来なかったのだ。
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・最初こそagodaで売った7万円から13万円の部屋は好調だったものの……途中から全予約サイトで販売が不調になった。これはおそらく6月上旬という、ねぶたプランにしては遅い時期に販売を始めたせいだと思われる。大きなお祭りともなると3~4カ月前から予約を組む人が多い傾向があり、一番売れ行きが多いのは3月~5月頃なのではないだろうか。そんな状況下で6月から販売を始めても思うようにいかないのも当然。しかもこれに従来より高い料金設定となれば……尚更だろう。
・ちなみに彼は7月中旬に、しれっと料金設定をいじって1万ほど下げるという暴挙に出た。一応大矢さんの許可を得たらしいが、他従業員からしたら批判の的だったろう。なにせ報奨金が下がってしまうのだから。
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・結果として8月度の売り上げは目標を達成できず、報奨金自体を全員貰うことができなかった。これを他社員は彼が料金設定を下げたせいだというが、それは違う。売れ残るのは料金設定が従来より高いせいであるし、大矢さん含め上層部はこれを決して認めることは無かった。
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・これが2019年、値段吊り上げをグループ全体で一番最初に行った例となった。次の年、さらには次の年も本社で設定した目標を達成するために、部屋の価値と相反するような価格設定をしようと上層部は考えたのである。それは “ねぶた祭り” という価値を過信することによって倫理観を封じ込めたのである。
・次のターミングポイントは、2020年3月。
退職 ホテルに見切りをつける
・新型コロナウイルスの流行によって、世の中がガラリと変わった。不要不急の外出は控え、三密になるような行為はしないように求められた。
・それは観光業界にとっては大打撃で、移動自体が制限されるのだから宿泊する人は減ってしまったし、某ホテル……セレスホテルでも当時84部屋中5部屋ほどしか使われていなかったのだという。従来の朝食はバイキング形式だったところ、一人一人に対して提供するお膳形式に変更。フロントの目前にはビニールシートを吊り下げたり、アルコールを置いたりもしたそうだ。
・ホテルに勤めていた彼から聞いた話によると、よくわからない業者から買った空気清浄機もあったそうだ。その機会には水以外にも専用の溶液を入れる必要があったが、その溶液というのを買い忘れて水だけ入れる羽目になり、実質的に保湿機に成り下がっていた展開は笑えた。もちろん笑っちゃいけないのだけども。
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・彼には仲のいいお医者様がいたのだが、それでコロナ禍というのを他の人よりも比較的正確に把握できたらしい。『これは一時の騒動では終わらない。最低2年は続くだろうから、ホテルや旅館にとっては試練の時になるぞ。』そこで3月上旬に早くも転職活動をスタートさせて、もう4月に入るか入らないかの頃に転職先を決定させていた。
・一方でセレスホテル青森には名古屋より新しい支配人が着任。この支配人のことを田野倉さんという事にしよう。それまで青森では支配人が空席であったので、それ自体は至って普通の事だろう。ただし着任したはいいものの、いくら安い値段を付けても一切客室が売れないという状況だった。そこで田野倉さんは考えたらしい。
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『わざと正常な部屋を訳アリという事にして、さらに値段を下げることのできる理由を作ろう』
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・ここまでくると意味不明だ。世間自体に需要がないから売れないのであって、安くすれば売れるということではないし、それはリネンの業者から他ホテルの状況も聞いて把握していたことに違いないのだから。
・彼はこの展開に……もうホテルに未来はないと感じたし、彼自身の決断は正解だったといえるだろう。つまるところ “訳アリ” にするために、わざと部屋の外にある水の元栓を締めて、水道が不調という事にしたと。しかし残念なことにその元栓のコック自体が老朽化していて、動かそうにもまったく動かない。動いたとしても一切戻せない。結果として業者を呼ぶ羽目になり、また修理するための費用がかさんでしまったのだ。ちなみにこの元栓は列並びの6部屋をまとめて操作するためのものであったので、6部屋全て犠牲になったことになる。
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・一応念のため注釈すると、これが出来るのは交差点を挟んで向かい側に温泉付きのホテルがあって、そこで日帰り入浴が出来るという環境があったからだったが……この他社に積極的に依存しようという考え方も末だなとも思える。
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・そういえば彼ではなく僕が後から気づいたことだが、函館の有名ブロガーにセレスホテルのことが悪く書かれたようで。正月にボイラーが故障した際に水が一向にお湯にならず、しかも暖房も付かず大変なな思いをしたと。その代わりにとホテルでは日帰りの入浴券を配っていたそうだ。
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・彼は転職がほぼ決まったタイミングで、支配人の田野倉さんと衝突したそうだ。20代後半のお客様とのトラブルがあったらしく、確か本来なら前日から予約を3泊4日で入れていたのだけど、一日遅く来たのだという。当時フロントで詰めていた従業員は今日から予約のお客様だと勘違いをしたまま検索をして、そのお客様は昨日の宿泊者であったから、本日付の宿泊者一覧での検索にはヒットしなかった。では昨日の一覧ではどう取り扱われていたかというと、専門用語では “NOSHOW” 。つまり泊まりにこなかったとして予約からは消されていた訳だ。でもお客様にとってすれば泊まる権利は今日もあるわけであるし、予約がないはずがないと言う。ましてや消すはずもないのだから。そのゴタゴタの過程で田野倉さんが割って入り、無理やり言いくるめて……連絡もしなかった来なかったお客様が全て悪いとし、ホテル側は何も悪くないと突っぱねた。
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・そしてそのお客様は……静かに泣いて、しばらくその場で立ち尽くした。
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・彼は指摘した。
・なんでホテル側も悪い点はあるのに、そこまでする必要があったのかと。
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・そのついでに転職する事実も伝えて、余計に激怒させた。
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・この田野倉さんというのがいわくつきの人物で、かつてネットでホテルごと炎上させた過去があった。今でも探せばネットで見れるそうで、一部文面を書いておこう。
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はじめまして。代表からはただ静かに重く、会社の方針や発展のために今後も職務を全うするのであれば、自らの失敗を認めきちんと勉強するように言われました。会社のトップに怒られたからというわけではなく今は皆様のツイートを拝見し、いかに浅はかな行動や発言であったかと反省する次第です。
私個人の偏向的な思想がいかに浅はかであったか、説明と理解を促されました。まわりに言われたから意見や思想を変えると言うわけではありません。 私の無配慮な言動で多くの方を傷つけたことに自ら気がつけなかった幼稚さを悔いております。 これまでの隣国各国、および政治的なツイートを削除いたしました。 今後このような発言は止めると誓い、あらためて謝罪をしていきたいと思います。 過去の私は一種の洗脳であったと認識しています。私みたいなネトウヨや、差別発言は日本の恥であることをあらためて認識しました。
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・結果としてその反省が活かされることは無く、今度はそれ以上の事態に見舞われることになった。それは2020年6月……彼がセレスホテルを退職できた6月15日の6日後のこと。
中国人留学生宿泊拒否の一件
・彼が退職してからというか……本来は4月初めにはすでに転職先を決めていた訳なので、法的には5月には次の職場に移れるのだ。でも当時のいわくつきの支配人、田野倉さんは『1ヶ月待ってくれないか』と無駄に引き留めをしたらしい。説得が否応なくうるさいので、一先ずは新しい職場に電話してその件を認めてもらったわけだが……きっとその短い間にコロナ禍も去って、彼が気変わりするとでも踏んでいたのだろうか。社員サービスも徹底し始め、宿泊客が減って規定通り社員が出社する必要もないからと、給料は出勤時と同様にあげるから休んでいいよという制度が作られた。その休みを利用して彼は新しいアパートを探し、引越しを済ませたのはとてつもなく皮肉だが。
・そういえば彼が転職を決断する前に、支配人よりもさらに上のブロック長である大矢さんから電話があったそうだ。
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『ずっと俺は君を八戸中央の支配人にと考えてきた。でも1年以上断り続けているのは何なんだ。じゃあ本八戸の方がいいのか?いい加減支配人になる気があるか決断してくれ』
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・結果として彼の決断に間違いはなく、今日のセレスホテル八戸中央の炎上騒ぎを見れば尚更だろう。ただし断り続けていた理由は当然今の事態を予想したからではなく、あくまで彼自身が支配人という立場に魅力を感じていなかったからである。問題ある店舗を受け持つ気は毛頭なく、給料という点でも1万円増えるだけであったから。
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・ホテルへ振り替えることなく去っていった彼を見て、田野倉さんはありとあらゆることを彼のせいにした。思うようにいかない今の状況を何かに当たりたかったのもあるだろうし、何もためらいもなく職場を捨てることが出来なことへの驚きややっかみもあっただろう。ちなみに彼自身も白状していたのだが、『ホテルが大変な時に逃げるのか』という思いから多くの従業員が彼を敵視しているような状況であったので、4月ぐらいからは “人から見える仕事” のみしっかり行ったのだという。
・SNSで脅しをかけるような田野倉さんのツイートを見て怯える彼。そこで彼はしばらく支配人のアカウントを見ないことにしたそうだ。
・でもその間に、例の事案が起きていたとは……。
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《東邦日報7月紙面》
身分証不提示青森のホテルで宿泊拒否/中国人留学生不快
観光客の増加に向け、おもてなしの向上を図ってきた青森県。新型コロナウイルス禍の中、宿泊施設は難しい対応を求められているが、関係者の間にはあらためてコンプライアンスの徹底を求める声もある
6月下旬、身分証を提示しなかったことをきっかけに、20代の中国人男性留学生が青森市内のホテルに「宿泊を断られた」ケースがあった。身分証を示さないことを理由に宿泊を断ることは、旅館業法に違反する。ホテル側は、男性とのやりとりに関する説明を避けているが、新型コロナウイルスが収束していないこともあり、県内の宿泊業者の中にはホテル側の対応に一定の理解を示す声もある。
男性は関西地方の私立大学4年生で、日本に住んで5年目。就職活動のため青森県を訪れ、青森県を離れた後、東邦日報「あなたの声から『フカヨミ』取材班」に情報を寄せた。
旅館業法は(1)伝染性疾病にかかっていると認められるとき(2)とばくなど違法行為をする恐れがあるとき-などを除いて「宿泊を拒んではならない」と規定。コロナ感染拡大を受けて日本ホテル協会が定めたガイドラインは、国内に住所がない外国人の宿泊者に対しては「国籍と旅券番号を記載し、旅券の写しを保管しましょう」と記すが、国内に住む外国人については特段触れていない。
男性は6月21日夕方、事前予約していたホテルにチェックインする際、フロントスタッフから在留カードやパスポートの提示を求められた。男性は「(提示する)法的根拠がない。民間人に在留カードなど大切なものを安易に見せることに抵抗があった」ため、提示しなかった。するとスタッフから「それでは宿泊できない。別の宿を探してほしい」という趣旨の話をされたという。
男性は警察官を呼び、警察官に身分証を提示。身分証の内容を警察官から説明してもらったが、それでも宿泊を認めてもらえなかった。男性は「ホテル側は警察官を通じて身分を確認したとして宿泊を認めてくれてもよかったのではないか」と話す。男性は国内企業から内定をもらっており、今後も日本で暮らす予定だが、「今回のことは不快に思った」と語った。
一方、ホテルの管理会社(東京)の担当者は取材に対し「社内で調査したが、当方としては宿泊拒否をしていないという認識だ」と答えた。ただ、男性とのやりとりについては「顧客情報のため明らかにできない」と繰り返し、スタッフの対応に関する詳しい説明はなかった。
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・最初は彼自身、そんな事案が起こっていたことなんて全く知らなかった。でも非通知着信も初めて来たことであるし、もしかして……と久しぶりに興味本位で支配人のアカウントを覗いたそうだ。すると事案が起きたのは正しくセレスホテル青森であり、その拒否した当事者がまさしく支配人の田野倉さんだったことが分かったのだ。しかもそれを、すでに退職していた彼が暴力団を使って悪意を持って仕掛けたことにしていた。
・つまり彼がもし後1ヶ月長く勤めていたらこの事件に遭遇したことになるし、もしくは当事者にさせられていたかもしれない。相手が中国人だというと……英語が使う必要があっただろうか。英語がまともに話せる社員は彼だけであったし、意思疎通困難の先に行き違いがあったのかもしれない。しかし留学生でしかも日本に住んで5年目なら、だいぶ日本語も上手いはずだ。
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・その紙面に躍っている話を僕に動揺して話す彼であったが……とここで彼は思い出した。セレスホテルが急ごしらえで作ったコロナ対策マニュアルのことを。確かに相当厳しいこと書いてあったらしく、海外から来たと思われる方には “宿泊拒否してもいい” と書いてあったのだそうだ。しかもそれで相手と言い争ったなら、なおさら意固地になって。あの田野倉さんならやりかねない。
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・その後、田野倉さんがどうなったかは分からない。彼自身は他従業員と連絡を取っていないそうだ。でも社員向けに配信されているyoutubeで社長が『問題を起こした社員がいました』とコメントしていたので、恐らくは怒られたに違いない。
戦争開始
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・長きにわたる戦争の発端になったのは、転職先への暴言電話。
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『彼は悪いやつで、貴社とは別に副業で給料を得ている。これは職務規定に違反はしないか?しかも以前の会社で犯した罪を償いきれていない。おそらくは暴力団と繋がっているはずだ。』
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・この話は直接彼へ伝えられることはなかった。しかし職員同士で噂されている所は聞いた。
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・副業に関してはおそらくトレーダーとしてではなく、僕のサイト運営に携わっていることが誤解されたのだろう。あくまで彼は趣味の一環として関わっているだけであり一銭も貰っていない。加えて転職先の名前からして町立……つまり公務員だと、これもまた誤解したのだろう。実際は私立なのだが。
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・しかも以前起きた事案……留学生を宿泊拒否して紙面にも書かれた件。それをまだ疑っているのか。
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・幸せに生きているのが、そんなに憎いか。
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・彼は反撃への一手を探した。
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・これはあくまで、正当な手段であらねばならない。
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・そして偶然見つけてしまったのだ。
・セレスホテル青森がねぶたプランを客室20万円で売っている現場を。シングル2万円から始まってトリプルルーム20万円。でも普段はトリプルを1万円で売っていたので、ということは20倍で売られていることになる。
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・この情報を彼から僕は貰った。僕も協力を申し入れ、今にまで続く反撃が開始されたのだ。
・だが僕は、彼に問いただした。
『その世間体の悪い事実を広めるのはいいとして、例えば一緒に働いてきた仲間にも不評を買うことになる。それに以前の支配人が問題を起こしたとするなら、もうすでに退職したかもしれないぞ。』
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・でも彼は言った。
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『もしホテルに僅かでも倫理観が残っているなら……それに賭けてみたい。どちみちこれは正常な沙汰じゃないんだ。辞めた人間がとやかく言う筋合いはないけど……もし従業員を批判から守ろうとする気がホテルにあるのなら、記事を見つけたらすぐに値段を例年通りに戻すに違いないのだから』
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『誰か従業員に連絡は取れないのか?』
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『取れるはずがないだろ。』
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・僕の書いているサイトは全国的に見れば規模は小さいが、確実に青森市全体に声が届くレベルの読者数は保持している。影響は必ずあるはずだ。
・彼にとってみれば “反撃” という意図だろうが、僕にとってすれば社会をあるべき姿に戻すという意味で有意義だと思った。それはぼったくりにしか見えないし、つまるところ社会悪なのかもしれない。もちろん値段を付けること自体は自由だし、お客様側にも選択の自由がある。だがこのホテルを契機として他のホテルまで追随するようになれば……ねぶた祭り自体が崩壊する。世間に開かれたものではなくなる。一部の金持ちだけの祭りになってしまう。そんなことを危惧した。
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・では記事化するにあたり、ホテル料金をどのように表現すればいいのだろう。その点に関しては僕より彼の方が優秀で、トレーダーとして稼いでいる知見が非常に生かされたと言える。FXであれば通貨のレートを時間足・日足・月足のローソクで常に監視し、過去データをエクセルに落として研究するのはお手の物だ。ひたすらPCと向き合うのは苦にならないし、その手法をホテル料金に当てはめれば良いだけなのだから。
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・2021年4月27日、最初の記事を公開。青森市街地を中心として、20社ものホテル料金変動の掲載を開始した。各ホテルで一番安い客室料金を最安値(シングル等料金)として、逆に一番高い料金を最高値(ダブルトリプル等料金)と設定してデータを集めることにしたのだった。
・5月1日、セレスホテル青森はトリプルルームを45万円に値上げ。
・5月3日、上記値上げの件も含め既出記事を更新。
・おそらくこのタイミングでセレスホテル側も気づいたようだ。月を跨いだ際に料金をさらに強気に変えたのは、このままだと売上目標に達しないと圧をかけられたのか、もしくは前年の叱責を挽回するための手段だったのか。
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・さすがに45万円という値段を衆人環視の場にさらされるのに引け目を感じたのだろう。次の日から一時的に38万円に下げたのだという。でも3日後には『もう公開してから数日経つし、もう読む人いなくて大丈夫だろう』とでも思ったのだろうか?再び45万円に戻した。
・彼はその行為を滑稽に思えたので、38万円だった日のレートを避けて45万に再び戻した日からのレートを掲載し、そうした一連の行為を追ううちに隔日でレートをチェックするという体制を確立したのだった。
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・5月9日、2本目となる関連記事を公開。
・ホテル側も意固地となり、もうトリプルルームを45万円台から変えなかった。
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・その状態がしばらく続いた。
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・周辺地域の祭りやイベントの中止発表が相次ぎ、青森ねぶた祭も開催を危ぶまれ始める。
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・そしてホテルは5月下旬、暴挙に出た。
・わざとシングルルームを45万円にして、トリプルルームを3万円にしたのだ。
・確かに……記事上ではホテルの一番安い値段と高い値段を載せていたが、結果として安い値段の客室にシングルが多く、高い方にはダブルやトリプルが集中していたので、そこで注釈として ”最安値(シングル等料金)” ”最高値(ダブルトリプル等料金)” と明記していたのだが…そこを崩そうとしたに違いない。
・でも僕と彼にとっては純粋に一番安い料金と高い料金を載せていくだけであるし、シングルとトリプルルームの値段がいきなり逆になっても、やることは変わらない。でももしそれを当サイト目掛けてやっている行為なのだとすれば、お客様のことを一切考えない暴挙であると言えよう。
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・そして……
・2021年6月2日、東邦日報より青森ねぶた祭り中止の報道が流れた。
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・6月3日、3本目となる記事を公開。
・この時は弘前さくら祭りの件と絡めた結果、非常に多くの方々にお読み頂けたかと思う。おそらく全ての方にとっては、裏でこういった意図があってやっていることなど想像もつかないだろうが。
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・SNS上でものすごい勢いを持って記事がリツイートされていく様子を見て……
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・セレスホテルは記事公開2時間後に最高値を45万円から1万円に。
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・残念ながら当該ホテルはキャンセル不可とてねぶたプランを販売していたので、仮に20万30万の客室に泊まることが無いとしても全額返金されることは無い。
・ただし同じようなパターンの他ホテルではキャンセル料全額返すと方針転換を表明していたが、最終的にセレスホテルがどのような判断をしたかは不明である。
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・1つの大きな流れが終った後、僕が思ったのは……他ホテルの料金も、中止報道後の対応も全て衆人環視の場にさらされるに至ったのだ。まさかセレスホテルの内輪揉めとも言える行為が、他ホテルの経営方針をも変える事態になっていくだなんて誰が思うのか。
先制攻撃
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・2021年は非通知着信が多い年となったらしい。
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・堂々と文句があるなら、彼のスマホに上司の電話なりホテルの公式電話からかければ良いのだ。
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・でも引け目があるから、堂々とはできない。
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・年は変わり、2022年。
・彼と僕は今年、セレスホテルがねぶたプランを売り出す前に、先制パンチを食らわしてやろうと決めた。
・というのも前年の記事はコロナ禍による影響とねぶた料金の話を二つ混ぜたことにより、読んで欲しい読者層に声が届いていなかった可能性があったからだ。コロナ禍全般のニュースを毛嫌いする人は一定数存在するので、今度は純粋にねぶた祭りにおける料金変動をテーマにすれば多くの方々にお読み頂けるのではないかと。
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・そして4本目記事を2022年3月18日に公開。
・過去に集めていたデータを再編集し、誰もがお読み頂けるように工夫を凝らしたつもりだ。こんなにも高くなったねぶた料金はあくまで一部ホテルで起きたことであり、多くのホテルは開催の是非が判明するまで売り控えをしていた事実は伝えなければならない。正しい情報を出来る限り拡散されるように祈りながら……書いたのが思い出される。
・加えて記事とは別にホテルレートの最新情報を各SNSで流し続けることにして、衆人環視の状況を作り出すことに努めた。これは全てのホテルに言えることだが、その客室料金自体の情報価値は、実は予約サイトに載ってるものとSNSや記事で流されたものとで意味合いは同じはずだ。なので仮に高い値段をつけていても、SNSや記事で取り上げられたからと言って本来怯える謂れはない。だってその価格設定に自信があるはずなのだから。堂々としていればいいはず。
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・青森市における多くのホテルの客室が去年に比べて格段と安くなった事実は、これまでお客様を軽視してきたことに他ならない。
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・堂々とできなかったセレスホテル青森は……一向に客室販売の開始をしなかった。その代わりに記事公開後、八戸中央と本八戸のレートに従来の販売価格に1万円ほど上乗せして売り上げを補おうとしていたが、果たしてそれの効力は如何に?
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・4月11日、突如として記事のアクセスが急上昇。同じころ彼に非通知着信あり。
・4月13日、北奧新報より記事が公開。
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「青森県内宿泊ゼロ」“ねぶた料金”も災いか
間もなく「弘前さくらまつり」が始まる。某社の「全国『さくら県』イメージランキング」では、青森県は全国3位に入った。多くの人がやってくるのは確実だ。その人たちが桜以外の良さにも触れ、青森県の食材・料理や土産品などを購入してもらうためにも県内に宿泊してもらうことが重要だ。繁忙だけを理由に、料金を桁外れに上げる「ねぶた料金」は、やめにしなければならないのだ。
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・おそらく彼の元職場に取材が入り、動揺した誰かかブロック長の大矢さんなのか不明ではあるが、文句の言いたさに非通知着信をしてきたのであろう。
・でも彼は言う。『毎回思うのだけど、着信が来るのは午前中の9時から11時ぐらいで、職場でスマホは休憩中以外ずっとロッカーに入れっぱなしだから……出ようにも出れないのよね。』先方は昼休みを狙うとか、そういった知恵が働かないらしい。残念だ。
・逆に言えばホテル業自体に”昼休みは12時~13時にとる”という概念が薄く、シフト制なので休憩時間もきっちり定まっているわけではない。なのでそういった”定時で休む会社がある”という発想に結びつかないのだろうか。
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・5月19日、再び非通知着信あり。
・『これはまた新聞の取材を受けたな?』と受け取った僕と彼はネット上で探してみると、ネット紙面の経済舎で出ているではないか。要点としては……
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・ #青森ねぶた祭 は6日間の期間中、県GDPの1%弱を稼ぐ。
・地域経済への影響度が最も大きかったのは382億円の #ねぶた祭 で、域内経済効果指数は全国平均を7.4ポイント上回る8.7。
・ #ねぶた 集客数が285万人と突出する。
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・おそらくは高値の訳を知らない経済舎が、純粋にその理由を知りたいがためにセレスホテルに取材申し入れをした可能性があるのではないか。もちろん断られただろうが。代わりに秋田で一番高いホテルが取材を受けていたのであった。
ホテル側、高値販売を断念
・2022年6月30日。
・これまでねぶたプランの販売開始を躊躇っていたセレスホテル青森は、楽天とじゃらんにて2万円台~7万円台の値段設定で販売を開始した。ちなみにagodaでの販売は料金設定はこれと同じであるものの控えめにしたようだ。販売料金の衆人環視という状況に追い込まれたセレスホテルは、45万円という異常に高い値段で売るのを社会的影響を鑑み、そうすることを避けたのだ。
・この時点でホテルは一切の客室が売れていない状況だったかもしれない。他のホテルであれば旅行業者に事前に一定数の客室を売り渡すことが多いのだが、セレスホテルはそれを嫌う。自由に値段を設定して個人に販売した方が売り上げが上がるだろうという考えからだ。なのでこれ以上……僕らの態度の変化を待って販売を躊躇っていては、客室の販売自体が出来なくなるという焦りも否定できない。
・ちなみになぜagodaで売るのを控えめにしたかというと……ねぶた料金のレート表を作る際に、agodaの情報を基に作られたからに他ならない。特に基準として扱っていた8月2日で売るのは避けていたように思われる。あくまで一般的なねぶた料金で売るのだから避ける必要もないのだが……ここにホテル側の心理的葛藤も見て取れる。負けを認めたくなかったのだ。
・おそらくはセレスホテルなりに、売上の目標金額を定めていたに違いない。例年はそれを10月に決めているという。去年の時点で……『まさか来年も妨害にあうはずはないだろう』という油断もあったろう。でも彼と僕はやるべきことを続けた。彼は元職場への反撃のために、僕はねぶたという文化を守るため。多くの人々に祭りを見てもらいたいため。祭りの時に嫌な思いをする人を無くすため。
・こうしてセレスホテルは高値で客室を売ることを諦めたが、でも仮に販売できていたとしても思うがままに売れていたかは微妙であっただろう。コロナ第7波の影響により他ホテルで予約キャンセルが相次いだのは事実なのだから。
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・ともかく、ねぶたで想像通りの売上は達成できなかった。この分をどこかで補わなければならない。
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・ここでチャンスが巡ってきたのだ。
・とあるフィギュアスケートの引退選手が八戸でイベントを開くという。予約が凄まじい勢いで入る様子を見て……慌てて調べて分かったのだろうか。
・大矢さんは青森1店舗と八戸2店舗を束ねるブロック長。青森の損失を八戸で補って当然なのである。ここはどんなにヘイトを集めても、高値で販売し続けなければならない。仮に売り続けたとしても……45万円で売り続けた当時、ホテルのサーバーがダウンするような事態には至らなかったという “経験” もあった。
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・これが油断に繋がった。
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・想定外だったのは、他のホテルでキャンセル騒ぎが起きたこと。
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・ヘイトの波は、このキャンセル騒ぎも巻き込み……さらに燃え上がる。
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・そして某巨大インフルエンサーがツイートしたことを契機として、セレスホテルは悪名を纏うことになった。いまでも誤解されたまま情報は伝播され、公式でいくら否定しようとも、正しい情報が流れているとは言えない状況だ。
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・この事案は今後どのような展開を迎えるかは……彼はもちろん分からないし、僕にも分からない。
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・余談ではあるが、僕が彼に話していない事実が一つある。それはハローワーク当局者から偶然聞いた話であるが、セレスホテル青森の正職員はたった1名なのだという。彼がいた当時は彼を含めて6名いたはずだが。
・ちなみに田野倉という名前でない人物が採用担当者として載っている。戦争の成れの果ては、彼の望んだ世界なのだろうか。
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