私を椎名林檎に沼らせたのは八戸市である。きっかけは当時父のカーラジオから聞こえてきた「真夜中は純潔」。厨二時分なので記憶が抜けているが、ありがとうローカルラジオ局。そして彼女を深掘りしたくなったとき、アルバムを収蔵していたのは八戸市図書館。図書館のリスニングコーナーのヘッドフォンで聴いた「勝訴ストリップ」の異国感たるや!はちゃめちゃにのめり込んだ。
そんな私に稲妻のごとく飛び込んで来た「椎名林檎が青森に来る。」と言うニュース。ハナっから「当たる訳ない」スタンスで数々のライブを観られるチャンスロスを重ねてきた身でも、じっとせずには居られなかった。慣れないプレイガイドサイトに戸惑い、ときたま「ぴあ!」と叫び出したくなりながらも申し込みは完了。はたしてはたして。。。
そして今回の椎名林檎のライブツアー初日の会場、青森市にある盛運輸アリーナ。
学生時代からのファンではあるが、実は林檎ちゃん関連のライブは人生に一度だけ。昔府中で東京事変(椎名林檎が結成したバンド)のライブを観た。そのときの座席からは彼女が小豆大の距離感だった。今回はこの好機を逃すまいと、かつて城山でウソドリを見つけるために買った双眼鏡を持って来た。
席に着いて開演まで双眼鏡の動作チェックをしていると、奇しくも隣の席のマダムも双眼鏡。お互い不思議な連帯感が生まれた。やおら話しかけて来たのはマダムから。会場についての話題だ。冬期はスケート場として機能している盛運輸アリーナは、冬期に行われるライブで一階席をつくるのに氷を張ったスケート場にシートを敷いて座席にするため、めちゃくちゃ寒いと言う。「ファンとして何かを試されているような状況ですね」とかなんとか返答した気がする。何かしこぶってんだ。
タクシーで会場まで来たと言うマダムは、道中運ちゃんから聞いた今朝の青森駅からの人の多さにも触れていた。それに対して私の口から出たのは「みんな何食べたんですかねー???」だった。その日のライブは夜からだったので、市外からのファンの方々が朝から青森入りしてくださったことがサプライズの様に嬉しかった。「ライブ後も市内の店で打ち上げしてほしい!」とも。脊髄反射するほどの郷土愛が私にもあった、、、?
人生二度目の、ステージで観る椎名林檎。彼女たちのチームが放つ表現に、時に前のめりで身を預け、時に身を引いて会場全体を見回してこの非日常な空間を余すことなくこの心身に受けることに全力を注いだ。思わず口パクで一緒に口遊んでしまうほど熱中して鑑賞しては会場のいろいろな場所に目をやった。どんなにこのライブに集中しても、アリーナの鉄骨や体育館の様な会場が目に入り瞬間的に冷静になる。「ここは青森なんだ。青森でこの瞬間を味わっているんだ」。そのめまいの様な感覚はふわふわと多幸感さえ感じさせた。
思えばこのライブを通して様々なことに感銘を受けた。お客さんの案内をするお兄さん、開演に追われる時間帯の中でレジをさばく物販のお姉さん、ライブの展開にときめき声をあげて喜ぶ隣の席のカップルの彼女さん、アンコールのための拍手を率先してくれた常連と思しきファンの方、、、全てが愛おしい!その最中、閃くように強く感じた「表現することをやめちゃいけないんだ!」と言ううこと。その人の表現がこう言ったメジャーな場で放てるものでも、マニアックでマイノリティなものでも、ミシュランのレストランで出す一皿でも、部屋で誰かのために出す一品も等しく表現で、換えが効かない。表現しようぜ!表現って、良いものだよ。ちなみに、今回観た林檎ちゃんは小指大でした。
|青森県営スケート場・盛運輸アリーナ|
http://aomori-skate.com/
|八戸市立図書館|
https://www.lib.hachinohe.aomori.jp/