#方言de小説 とは?
これは現代語を津軽弁に翻訳して楽しむ作品です。
変えるべき表現がございましたら、どんどん指摘してください!
作者は様々なご意見を受け入れて、よりより津軽弁作品を作って参ります。
かんからツイッターより
今回は太宰治 失敗園でお送りします。
(前作、#方言de小説 太宰治 黄金風景 完結済)
元々この作品は他サイトでも方言版を載せているのですが、コネクトにも掲載したいと思います。台風の時はだまって家で小説を読めばいいんです!というまさかの強気発言をしておきます!!
(書いているのは19/10/12 台風19号の風雨時)
次いでながら……今の時代には便利なモノがございまして、文章を入力するだけで津軽弁にしてくれるというサイトもございます。ただやっぱり完璧ではないですし、というかぐじゃぐじゃに出てしまうのが限界。せっかくなので見比べてくださると、僕がちゃんと津軽弁訳をしているのだなとお分かりいただけると思います!
(とはいいつつ、参考程度には見てますよ。ただし完成品は、まったく違うものになってます)
**標準語**
**機械方言**
**かんから方言版**
あと今度からですけど、挿絵もいれたいなーと企んでいるところです。だって文字ばかりだと飽きませんか?
標準語
(わが陋屋には、六坪ほどの庭があるのだ。愚妻は、ここに、秩序も無く何やらかやら一ぱい植えたが、一見するに、すべて失敗の様子である。それら恥ずかしき身なりの植物たちが小声で囁き、私はそれを速記する。その声が、事実、聞えるのである。必ずしも、仏人ルナアル氏の真似でも無いのだ。では。)
とうもろこしと、トマト。
「こんなに、丈ばかり大きくなって、私は、どんなに恥ずかしい事か。そろそろ、実をつけなければならないのだけれども、おなかに力が無いから、いきむ事が出来ないの。みんなは、葦だと思うでしょう。やぶれかぶれだわ。トマトさん、ちょっと寄りかからせてね。」
「なんだ、なんだ、竹じゃないか。」
「本気でおっしゃるの?」
「気にしちゃいけねえ。お前さんは、夏痩せなんだよ。粋なものだ。ここの主人の話に拠ればお前さんは芭蕉にも似ているそうだ。お気に入りらしいぜ。」
「葉ばかり伸びるものだから、私を揶揄なさっているのよ。ここの主人は、いい加減よ。私、ここの奥さんに気の毒なの。それや真剣に私の世話をして下さるのだけれども、私は背丈ばかり伸びて、一向にふとらないのだもの。トマトさんだけは、どうやら、実を結んだようね。」
「ふん、どうやら、ね。もっとも俺は、下品な育ちだから、放って置かれても、実を結ぶのさ。軽蔑し給うな。これでも奥さんのお気に入りなんだからね。この実は、俺の力瘤さ。見給え、うんと力むと、ほら、むくむく実がふくらむ。も少し力むと、この実が、あからんで来るのだよ。ああ、すこし髪が乱れた。散髪したいな。」
クルミの苗。
「僕は、孤独なんだ。大器晩成の自信があるんだ。早く毛虫に這いのぼられる程の身分になりたい。どれ、きょうも高邁の瞑想にふけるか。僕がどんなに高貴な生まれであるか、誰も知らない。」
ネムの苗。
「クルミのチビは、何を言っているのかしら。不平家なんだわ、きっと。不良少年かも知れない。いまに私が花咲けば、さだめし、いやらしい事を言って来るに相違ない。用心しましょう。あれ、私のお尻をくすぐっているのは誰? 隣りのチビだわ。本当に、本当に、チビの癖に、根だけは一人前に張っているのね。高邁な瞑想だなんて、とんでもない奴さ。知らん振りしてやりましょう。どれ、こう葉を畳んで、眠った振りをしていましょう、いまは、たった二枚しか葉が無いけれども、五年経ったら美しい花が咲くのよ。」
にんじん。
「どうにも、こうにも、話にならねえ。ゴミじゃ無え。こう見えたって、にんじんの芽だ。一箇月前から、一分も伸びねえ。このまんまであった。永遠に、わしゃ、こうだろう。みっともなくていけねえ。誰か、わしを抜いてくれないか。やけくそだよ。あははは。馬鹿笑いが出ちゃった。」
だいこん。
「地盤がいけないのですね。石ころだらけで、私はこの白い脚を伸ばす事が出来ませぬ。なんだか、毛むくじゃらの脚になりました。ごぼうの振りをしていましょう。私は、素直に、あきらめているの。」
棉の苗。
「私は、今は、こんなに小さくても、やがて一枚の座蒲団になるんですって。本当かしら。なんだか自嘲したくて仕様が無いの。軽蔑しないでね。」
へちま。
「ええと、こう行って、こうからむのか。なんて不細工な棚なんだ。からみ附くのに大骨折りさ。でも、この棚を作る時に、ここの主人と細君とは夫婦喧嘩をしたんだからね。細君にせがまれたらしく、ばかな主人は、もっともらしい顔をして、この棚を作ったのだが、いや、どうにも不器用なので、細君が笑いだしたら、主人の汗だくで怒って曰くさ、それではお前がやりなさい、へちまの棚なんて贅沢品だ、生活の様式を拡大するのは、僕はいやなんだ、僕たちは、そんな身分じゃない、と妙に興覚めな事を言い出したので、細君も態度も改め、それは承知して居ります、でも、へちまの棚くらいは在ってもいいと思います、こんな貧乏な家にでも、へちまの棚が出来るのだというのは、なんだか奇蹟みたいで、素晴しい事だと思います、私の家にでも、へちまの棚が出来るなんて嘘みたいで、私は嬉しくてなりません、と哀れな事を主張したので、主人は、また渋々この棚の製作を継続しやがった。どうも、ここの主人は、少し細君に甘いようだて。どれ、どれ、親切を無にするのも心苦しい、ええと、こう行って、こうからみ附けっていうわけか、ああ、実に不細工な棚である。からみ附かせないように出来ている。意味ないよ。僕は、不仕合わせなへちまかも知れぬ。」
薔薇と、ねぎ。
「ここの庭では、やはり私が女王だわ。いまはこんなに、からだが汚れて、葉の艶も無くなっちゃったけれど、これでも先日までは、次々と続けて十輪以上も花が咲いたものだわ。ご近所の叔母さんたちが、おお綺麗と言ってほめると、ここの主人が必ずぬっと部屋から出て来て、叔母さんたちに、だらし無くぺこぺこお辞儀するので、私は、とても恥ずかしかったわ。あたまが悪いんじゃないかしら。主人は、とても私を大事にしてくれるのだけれど、いつも間違った手入ればかりするのよ。私が喉が乾いて萎れかけた時には、ただ、うろうろして、奥さんをひどく叱るばかりで何も出来ないの。あげくの果には、私の大事な新芽を、気が狂ったみたいに、ちょんちょん摘み切ってしまって、うむ、これでどうやら、なんて真顔で言って澄ましているのよ。私は、苦笑したわ。あたまが悪いのだから、仕方がないのね。あの時、新芽をあんなに切られなかったら、私は、たしかに二十は咲けたのだわ。もう、駄目。あんまり命かぎり咲いたものだから、早く老い込んじゃった。私は、早く死にたい。おや、あなたは誰?」
「我輩を、せめて、竜の鬚とでも、呼んでくれ給え。」
「ねぎ、じゃないの。」
「見破られたか。面目ない。」
「何を言ってるの。ずいぶん細いねぎねえ。」
「ええ面目ない。地の利を得ないのじゃ。世が世なら、いや、敗軍の将、愚痴は申さぬ。我輩はこう寝るぞ。」
花の咲かぬ矢車草。
「是生滅法。盛者必衰。いっそ、化けて出ようか知ら。」
機械方言
(わが陋屋には、六坪ほどの庭があるのだ。愚妻は、こごさ、秩序も無ぐ何やらがやら一ぱい植えだが、一見するに、すべで失敗の様子だ。それら恥ずがすき身なりの植物だぢが小声で囁ぎ、わっきゃそれば速記する。その声、事実、聞えるのだ。必ずすも、仏人ルナアル氏の真似でも無えのだ。では。)
とうもろごすと、トマト。
「こったらに、丈ばす大ぎぐなって、わっきゃ、どったに恥ずがすい事が。そろそろ、実ばづげねばまいねのだばって、おながに力無えはんで、いぎむ事出来ねの。みんなは、葦だど思うびょん。やぶれがぶれだわ。トマトさん、わんつか寄りががらせでね。」
「なんだ、なんだ、竹でねが。」
「本気でおっしゃるの?」
「気にすてまりげねえ。おめさんは、夏痩せなんだよ。粋なものだ。ここの主人の話さ拠ればおめさんは芭蕉にも似でらそうだ。お気さ入りらすいぜ。」
「葉ばす伸びるものだはんで、わーば揶揄なさってらのよ。ここの主人は、い加減よ。わー、ここの奥さんに気の毒なの。それや真剣においの世話ばすて下さるのだばって、わっきゃ背丈ばす伸びで、一向にふとねのだもの。トマトさんだげは、どうやら、実ば結んだようね。」
「ふん、どうやら、ね。もっともわっきゃ、下品な育ぢだはんで、放って置がぃでも、実ば結ぶのさ。軽蔑す給うな。こぃでも奥さんのお気さ入りなんだはんでね。この実は、おいの力瘤さ。見給え、うんと力むど、ほら、むぐむぐ実がふくらむ。も少す力むど、この実、あがらんで来るのだよ。ああ、すこすじゃんぼが乱れだ。散髪すたいな。」
クルミの苗。
「わっきゃ、孤独なんだ。大器晩成の自信があるんだ。早ぐ毛虫さ這いのぼらぃる程の身分になりだい。どれ、きょうも高邁の瞑想にふけるが。わーがどったに高貴な生まぃであるが、誰も知ね。」
ネムの苗。
「クルミのチビは、何ば言っちゅのがすら。不平家なんだわ、きっと。不良少年がも知れね。いまにわー花咲げば、さだめす、いやらすい事ば言って来るに相違ね。用心するべ。あれ、おいのどんずばくすぐってらのは誰? 隣りのチビだわ。本当さ、本当さ、チビの癖さ、根だげは一人前さ張ってらのね。高邁な瞑想だなんて、とんでもね奴さ。知らん振りすてやるべ。どれ、こう葉ば畳んで、眠った振りばすていましょう、いまは、たった二枚すか葉無えばって、五年経ったっきゃ美すい花咲ぐのよ。」
にんずん。
「どうにも、こうにも、話にならねえ。ゴミじゃ無え。こう見えだって、にんずんの芽だ。一箇月前がら、一分も伸びねえ。このまんまであった。永遠さ、わしゃ、こうだびょん。みっともなぐでいげねえ。誰が、わすば抜いでぐれねが。やげぐそだよ。あははは。馬鹿笑いが出でまった。」
だいごん。
「地盤がいげねのだね。石ごろだらげで、わっきゃこの白い脚ば伸ばす事出来ませぬ。なんだが、毛むぐじゃらの脚になった。ごぼうの振りばすていましょう。わっきゃ、素直さ、あぎらめでらの。」
棉の苗。
「わっきゃ、今は、こったらに小さぐでも、やがで一枚の座蒲団になるんだって。本当がすら。なんだが自嘲すたぐで仕様無えの。軽蔑すねでね。」
へぢま。
「ええど、こう行って、こうはんでむのが。なんて不細工な棚なんだ。からみ附ぐのに大骨折りさ。ばって、この棚ば作る時さ、ここの主人ど細君どは夫婦喧嘩ばすたんだはんでね。細君にせがまぃだらすく、ばがな主人は、もっともらすい顔ばすて、この棚ば作ったのだが、いや、どうにも不器用だはんで、細君笑いだすたっきゃ、主人の汗だぐで怒って曰ぐさ、そいだばおめがやりなさい、へぢまの棚なんて贅沢品だ、生活の様式ば拡大するのは、わっきゃいやなんだ、わんどは、そった身分でね、と妙さ興覚めな事ば言い出すたはんで、細君も態度も改め、それは承知すて居ります、ばって、へぢまの棚ぐらいは在ってもいど思います、こった貧乏なえにばって、へぢまの棚出来るのだどいうのは、なんだが奇蹟みだいで、素晴すい事だど思います、おいの家にばって、へぢまの棚出来るなんて嘘みだいで、わっきゃ嬉すくてならね、と哀れな事ば主張すたはんで、主人は、まだ渋々この棚の製作ば継続すやがった。どうも、ここの主人は、少す細君さ甘えようだで。どれ、どれ、親切ば無にするのも心苦すい、ええど、こう行って、こうはんでみ附げっていうわげが、ああ、実さ不細工な棚だ。からみ附がせねように出来でら。意味ねよ。わっきゃ、不仕合わせなへぢまがも知れぬ。」
薔薇ど、ねぎ。
「ここの庭では、やはりわー女王だわ。いまはこったらに、からだが汚れで、葉の艶も無ぐなってまったばって、こぃでも先日までは、次々ど続げで十輪以上も花咲いだものだわ。ご近所の叔母っちゃたぢが、おお綺麗で喋ってほめるど、ここの主人必ずぬっと部屋がら出で来で、叔母っちゃたぢに、だらす無ぐぺごぺごお辞儀するはんで、わっきゃ、たげ恥ずがすかったわ。あだまが悪いんでねがすら。主人は、たげわーば大事にすてぐれるのだばって、むったど間違った手入ればすするのよ。わー喉が乾いで萎れがげだ時には、ただ、うろうろすて、奥さんばひどぐ叱るばすで何も出来ねの。あげぐの果には、おいの大事な新芽ば、気狂ったみだいに、ちょんちょん摘み切ってまって、うむ、こぃでどうやら、なんて真顔で言って澄ますてらのよ。わっきゃ、苦笑すたわ。あだまが悪いのだはんで、仕方がねのね。あの時、新芽ばあったらに切らぃねがったっきゃ、わっきゃ、たすかに二十は咲げだのだわ。もう、まいね。あんまり命かぎり咲いだものだはんで、早ぐ老い込んでまった。わっきゃ、早ぐ死にだい。おや、なっきゃ誰?」
「我輩ば、せめで、竜の鬚どばって、呼んでぐれ給え。」
「ねぎ、でねの。」
「見破らぃだが。面目ね。」
「何ば言っちゅの。わった細いねぎねえ。」
「ええ面目ね。地の利ば得ねのじゃ。世世だば、いや、敗軍の将、愚痴は申さぬ。我輩はごう寝るぞ。」
花の咲がぬ矢車草。
「是生滅法。盛者必衰。いっそ、化げで出るべが知ら。」