投稿者: Contributor
・ 慶長五年八月十五日 南部領稗貫 雄山寺 少々肌寒さが出てきた、穏やかな日和である。 その老人は、落成して間もない寺を参詣する人波を、端でぼんやりと眺めていた。 背は高いがぴんと伸びている。…
・ その日、とある平原の小高い丘に、ひとりの男がいた。 芦毛の馬に乗った武士だ。二十の若臭さはとうに抜けきり、三十にほど近いか。調練の後なのか、その顔は汗だくで、軽く着付けた帷子からは、うっすらと湯気が立ち上っていた。 …
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