ガソリンがまた上がってきた。車移動が前提になりやすい青森では、この数円の上昇でもじわじわ重い。2026年3月9日時点の集計では、青森県のレギュラーガソリン平均は153.6円で、前週より4.1円上昇した。全国平均157.4円より水準自体は低いが、上がり方を見ると「またか」と感じた人も多そうだ。政府は燃料価格の急騰を抑えるため補助を続けているが、家計にとってガソリン高が気になる状況は変わっていない。
こういう時に突拍子もなく思いついたのが、そもそも青森県に油田はあればいいなという話だ。結論から言うと、青森県は新潟県、秋田県、北海道のような国内の主要油田がある地域には入っていない。日本全体でも原油の多くを海外に頼っていて、国内で「掘ってまかなう」構図ではない。
とはいえ、青森が石油とまったく無縁だったわけでもない。むしろ津軽地方は、昔から石油の可能性が意識されてきた地域だ。石油技術協会誌の論文や地質資料には、大釈迦、蟹田、鯵ケ沢、西津軽、五所川原周辺などで石油を視野に入れた調査が行われてきた記録が残っている。資料名の中には、いま見ると少し驚くような「大釈迦油田」「蟹田油田」という表現まである。
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例えば5万分の1地質図幅説明書『蟹田』(青森―第11号)の文献欄には、『青森県大釈迦油田地形および地質図説明書』『青森県蟹田油田地形および地質図説明書』の記載が確認できる
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ただ、ここがいちばん大事なところだ。津軽では長く探鉱が続いたものの、1993年の論文では、1980年代半ばまで調査が続いても商業的規模の石油は見つかっていないと整理されている。つまり青森県は、「油田がある県」というより、油田になるかもしれないと期待されて調べられてきた県だった、というのが実態に近い。夢はあったが、現実はなかなか厳しかった。
では、青森県はいま石油と縁が薄いのかといえば、そうでもない。六ヶ所村にはむつ小川原国家石油備蓄基地があり、備蓄施設容量は約570万キロリットル。青森県は石油を「掘る場所」ではなく、石油を「備える場所」として、日本のエネルギー供給を支える役割を担っている。ガソリン価格が上がるたびに「青森で石油が出れば…」と思いたくなるが、現実の青森は、産油県ではなく備蓄県として日本のエネルギーを下支えしているわけだ。
ガソリン高のいまだからこそ、青森と石油の距離感はちょっと面白い。津軽には確かに“石油の夢”を追った歴史があった。けれど、いまの青森県は油田のある県ではない。その代わり、六ヶ所の備蓄基地のように、日本全体のエネルギーを静かに支える役目を担っている。そう考えると、ガソリン価格のニュースも少し違って見えてくる。
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参考資料
・gogo.gs「2026年3月9日(月)都道府県別平均ガソリン価格」
青森県のレギュラー平均価格と、前週比の上昇幅を確認するために参照。
・資源エネルギー庁「燃料油価格定額引下げ措置」
ガソリン価格対策の制度概要や、定額引下げ措置の考え方を確認するために参照。
・岩佐三郎「青森県津軽地方の含油第三系とその構造発達史について」(石油技術協会誌、1962年)
津軽地方が古くから含油地域として注目されてきたことや、当時の探鉱史を押さえるために参照。
・氏家良博「津軽盆地における石油根源岩評価」(石油技術協会誌、1993年)
津軽盆地で探鉱が続いた一方、商業的規模の石油発見には至っていないことを確認するために参照。
・産業技術総合研究所 地質図幅資料「金木」「油川地域」
大釈迦油田、蟹田油田、青森市西部、西津軽など、青森県内で過去に石油調査の対象となった地域名や関連文献を確認するために参照。
・JOGMEC「むつ小川原国家石油備蓄基地」
青森県六ヶ所村が、現在は“掘る場所”ではなく“備える場所”として日本の石油備蓄を支えていることを確認するために参照。







