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「旧正月は春じゃない?」雪国・青森に残る“もう一つの正月” えんぶり・ろうそくまつりに見る祈りの原点

アジア各地で祝われる旧正月。
華やかな春節の映像を思い浮かべる人も多いが、青森県の“旧正月”は少し様子が違う。

青森県でも旧暦の正月に由来する行事が各地で行われ、その中の一つ、八戸えんぶりが本日より始まった。

それらすべての行事にあるのは――
雪の中で春を呼ぶ祈りだ。

現在の暦では2月上旬から中旬にあたる旧正月の頃、県内各地では五穀豊穣や無病息災を願う行事が集中する。これらは、かつて旧暦で暮らしていた時代の正月行事の名残であり、青森の厳しい自然と深く結びついた民俗文化でもある。

八戸えんぶり――田植えを舞い、“春を呼ぶ”

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旧正月期の青森を代表する行事といえば、八戸市の「八戸えんぶり」だ。

毎年2月17日から20日にかけて行われるこの祭りは、田植えの所作を表現した舞で豊作を予祝するもの。
国の重要無形民俗文化財にも指定されている。

まだ雪に閉ざされた季節に田植えの動きを舞う――
これは“春を先取りして呼び込む”という、農耕文化の象徴的な祈りの形だ。

家々の前で舞う「門付け」は、かつての小正月行事の性格を色濃く残している。

津軽にある“旧正月の信仰行事”

津軽地方では、旧正月から小正月にかけて独特の信仰行事が続く。

沢田ろうそくまつり(弘前市)

岩木山神社の神木にろうそくを供え、五穀豊穣や家内安全を祈願する。

乳穂ヶ滝氷祭(西目屋村)

凍りついた滝の形で豊凶を占う“自然の神意”を読む祭り。

七日堂祭などの冬の堂行事

火・光・水といった自然の力に祈りを捧げる。

これらはすべて、「年のはじめの祈り」という点で共通している。

いにしえに残る“小正月の来訪神

他方では、小正月に子どもたちが家々を回る行事の記録も残る。

年神の使いともされる存在が訪れ、餅や菓子を受け取る――
これは全国の来訪神行事と同じ構造を持つ。

つまり旧正月とは、単なる日付ではなく
“年神を迎える時間帯”
だったのである。

なぜ旧正月は2月なのか

1月は農の動きが始まらない。

だからこそ――
農作の始まりを祈る行事は
旧暦の正月=現在の2月
に行われた。

そこにあるのは合理性だ。

そしてもう一つ。
最も寒い時期に春を願うことで、祈りの意味がより強くなる。

  • 春を呼ぶ

  • 豊作を願う

  • 自然の力を読む

豪雪の地だからこそ、春は“来るもの”ではなく
“呼び寄せるもの”
だった。

まとめ

旧正月という言葉から春節の華やかさを想像すると、青森の行事はまったく違って見える。

しかしその本質は同じ。
新しい年の始まりを祝う祈りだ。

ただし青森では――
それは雪の中で行われる。

えんぶりの舞も、ろうそくの灯も、氷瀑を見上げる人々の願いも。
すべては、まだ見ぬ春に向けられている。

青森県の旧正月は、
“春を待つ文化”そのものなのである。

Author: かんから
本業は病院勤務の #臨床検査技師 。大学時代の研究室は #公衆衛生学 所属。傍らでサイトを趣味で運営、 #アオモリコネクト 。

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