写真提供:レイさん
2023年7月28日に全国順次公開された日本映画『658km、陽子の旅』は、熊切和嘉監督がメガホンをとり、菊地凛子を主演に迎えたヒューマンドラマです。就職氷河期世代の女性が、父親の死をきっかけに故郷へ向かう旅を通じて、自身の人生と向き合う姿を描いた作品。初冬の東北を舞台に、ヒッチハイクという過酷な旅がもたらす心の変化を、リアルに表現しています。この映画は、上海国際映画祭で三冠を達成するなど、国内外で高い評価を受けています。
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あらすじ
主人公の陽子(菊地凛子)は、42歳の独身フリーター。東京で引きこもり生活を送り、人生を諦めかけていました。長年断絶していた父親の訃報を受け、故郷の青森県弘前市へ帰省することに。従兄の茂(竹原ピストル)とその家族に連れられて車で向かいますが、サービスエリアでトラブルが発生し、置き去りにされてしまいます。所持金もなく、ヒッチハイクを余儀なくされた陽子は、毒舌のシングルマザー(黒沢あすか)、人懐こい女の子(見上愛)、怪しいライター(浜野謙太)、心温まる夫婦(吉澤健、風吹ジュン)らと出会います。さらに、若き日の父の幻(オダギリジョー)と対峙する中で、止まっていた心が揺れ動き始めます。東京から青森までの658kmの旅は、陽子の内面的な再生の物語として展開します。
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見どころ
この映画の魅力は、ロードムービーとしてのダイナミズムと、主人公の内面的成長の繊細な描写にあります。就職氷河期世代の「人生のままならなさ」をテーマに、他人との関わりがもたらす変化をリアルに描き、観客の共感を呼んでいます。初冬の東北の風景が、陽子の孤独を象徴的に映し出し、ジム・オルークの音楽が情感を高めます。著名監督からの賛辞も多く、アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥは「彼女の過去と対峙する姿に胸を締め付けられた」と語っています。
そして第25回上海国際映画祭コンペティション部門で、
最優秀作品賞・最優秀女優賞・最優秀脚本賞の三冠 に輝いた話題作でもあります。
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視聴者の反応
SNSでは、人生にどこか諦めを抱えてきた人たちから、
「陽子の気持ちが痛いほどわかる」「人に傷つけられ、人に救われていく過程が刺さった」といった声が多く寄せられています。
就職氷河期世代からは、「ヒトとしての尊厳を脅かされながらの大冒険のように感じた」という感想も見られ、
陽子の旅路に自分自身を重ねる視点が目立ちます。
本作は、執筆時点では Prime Video などの配信サービスでも視聴できます(配信状況は変更になる場合があります)。
気になった方は、ぜひチェックしてみてください。







