|その関係、アオモリにつき。|#11 地獄でアイをさけぶとき。

県内外で活躍する青森出身のイラストレーター、トヨカワチエさんの展示を観に青森県美術館へ。8月頭の県美、平日昼前でもたくさんのお客さんで賑わっていた。展示場所を探していたら黒地にイチゴ柄のオールインワンの女性=チエさんご本人と遭遇!笑 展示スペースまで案内していただいた。

鮮やかな配色と親しみのあるタッチで描かれたイラストたち。彼女の魅力のひとつに、ペンのタッチ、ラインから感じる親近感にあるのではと思う。なので、昨秋の個展「スーパーLOVE♡温泉」では驚かされた。チエさんの選ぶ色合いそのままに、吐露されたネガティブから始まる表現の数々。その時はちょっとびっくりしてしまって、気持ちの深いところできちんと受け止められなかった。

そうしている間に開かれた今回の県美での展示。題して「スーパーラブ♡地獄」。泣いたり、舌を出したり、こちらを強く睨み付ける角の生えた女性たち。ヒリヒリとした感情のポジティブでない部分を表現されているのに、かえって生命力を感じたのは私だけだろうか。

最近、「作家の作風と本人の共通点」について考えている。先日のワノさんのDJでの選曲の雰囲気と共通する、彼の喋るときの角の取れた印象のやさしい声色。そんな共通点をチエさんの作風にも感じた。「地獄」をテーマにした作品に描かれた女性の顔つきは、さながら能面の生成(なまなり)のようでも、何処か愛らしさを湛えた顔付きだった。それは決して「必死に感情を振り切っているけどかわいいw」みたいな意味ではなく、そう言う局面的なシーンを切り取って描いていても何処かチエさんが普段コミュニケーションで大切にしている部分が反映されているのかなあと言う感じだった。

この展示でもうひとつ印象的だったのは、イラストに散りばめられた言葉たち。何かを表現するためには影の努力とか、伝えたいことのために表現しない部分が必ずある。それが作家さんの日記から引き出された言葉を組み合わせることで、彼女の多岐に渡る活動を支えていた考えや精神が垣間見えるのは、いいパンチを喰らって逆に爽快感!みたいだった。

誰しも受け手にとってキャッチーな生き方ばかりできない。それでも続いて行く人生の中で生まれるつらみを、整頓されたり改善を促したりなんて放っといてくれ!!と思うこともある。会期終了後にSNSにアップされたチエさんの投稿を結ぶ「わたしの地獄はわたしのものだし、あなたの地獄はあなたのものだよ!」に彼女のやさしさと反骨心を感じた。

|トヨカワチエ|
@toyokawachie
トヨカワイラスト研究所
つらいデザイン

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